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寿し処 松楽スポットライトインタビュー 遠藤美由紀さん - #MyGiving Story


日本滞在中、私は数多くの新たな驚きと、美しくも素朴な魅力の数々に出会いました。息をのむような田園風景から活気あふれる都会の街並み、そして圧倒されるような寺院に至るまで、毎日が豊かな文化に浸る体験の連続でした。しかし、数ある体験の中でも特に心に残っているのは、閑静な上北沢にある滞在先で行われた地域イベントへの参加です。


「こども食堂」と呼ばれるこのイベントは、私の住む「上北ハウス」が、近隣の子供たちのその月の誕生日を祝うために毎月開催しているものです。しかし、この活動が実現しているのは、寿司店「寿し処 松楽」を営み、食事の提供を担ってくださっている美由紀さんと遠藤義明さんの、温かい心と粘り強い尽力があってこそです。地域や仕事に対する美由紀さんの情熱は、雨上がりの陽光のように鮮烈で印象的であり、今回お話を伺う機会に恵まれたことに深く感謝しています。


「My Giving Story」より、美由紀さんと「Giving Tuesday Japan」のコンテンツ・インターンであるユニークさんとのインタビューをご覧ください


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ユニーク: こんにちは。また、お話しできて、嬉しい限りです。ご自身や経営されている寿し処 松楽について、また、ご出身地とこの業界での経歴についてもご紹介いただけますでしょうか。

美由紀: こんにちは。私は遠藤美由紀と申します。夫は遠藤義明です。私たちは夫婦ともに東京で生まれ育ちました。

 

私たちが営む「Sushidokoro Shouraku(寿し処 松楽)」は、東京都杉並区下高井戸で58年続く家族経営の寿司店です。この店を開いたのは主人の父で、主人は高校卒業後から父のもとで修業を始め、寿司職人として経験を積んできました。

 

私は同じ商店街にある町の電気店で育ち、ご縁があって寿司店へ嫁ぎました。現在は、店の運営だけでなく、商店街のイベントやこども食堂スペシャル版である、町のおたんじょう会などの活動にも夫婦で取り組んでいます。

 

私たちは、地域に根ざした寿司店として、おいしい料理を提供するだけでなく、人と人とのつながりを育む場でありたいと考えています。




ユニーク: 上北沢のKAMIKITA HOUSEで月に一度、ご夫婦で、こども食堂に料理を提供されていますが、この活動に携わるきっかけは、何でしたか。また、このようなイベントに参加される上で、あなたの役割は、どの程度を占めますか。こうしたイベントを通じて、人々にどのようなことを得てほしいとお考えですか。


美由紀: 町のおたんじょう会は、毎月、その月に誕生日を迎える子どもたちと、その子をお祝いしたいお友達やご家族を招待して開催している地域のお祝いの会です。参加するこどもが少ない月は近隣のご高齢のお誕生月の方もお声がけしています。


料理は、地域に根ざした飲食店がそれぞれ自慢の料理を持ち寄り、地域で活動するさまざまな職業の方々も、それぞれの得意分野を生かして子どもたちのお祝いに参加してくださいます。これまでにも、日本舞踊の先生による演舞、マジシャンによるコミュニケーションマジック、チェロの演奏、ヘアメイクさんによる誕生日の子どもへのヘアセットなど、多くの方が「自分のできること」を持ち寄ってくださいました。



また会場であるKAMIKITA HOUSEさんのような多文化に触れることのできる施設が私たちの活動を受け入れてくださったことも大きかったです。個人の思い付きだった活動が、協力いただける強い力を得て、思い描いていたよりずっと素敵な会を開く事ができました。

 

私がこの活動を始めようと思ったきっかけは、娘が小学生だった頃、同級生の女の子が突然ヤングケアラーとなり、生活環境が大きく変わってしまったことでした。経済的な困難や虐待だけではなく、家庭の事情によって子どもの生活が大きく変わることがあります。しかし、学校はプライバシーの問題から家庭に深く関わることが難しく、必要な支援が届きにくい現実があります。

 

その経験から、「学校だけではなく、地域にも子どもたちを見守る大人が必要ではないか」と考えるようになりました。飲食店や商店街の人、地域のボランティアなど、「知っている大人」が日頃から子どもたちと顔を合わせる関係があれば、小さな変化にも気づきやすくなり、孤立を防ぐことにつながると信じています。

 

私たち夫婦は料理を提供するだけでなく、地域の飲食店やボランティアの皆さんをつなぎ、子どもたちやご家族が安心して過ごせる場づくりを行っています。

 




私がこの活動を通して何より願っているのは、「地域には自分を気にかけてくれる人がいる」と子どもたちや保護者に感じてもらうことです。そして、子どもから高齢者まで、地域に暮らす人たちが世代や立場を超えてつながり、お互いを支え合える地域を育んでいきたいと考えています。


ユニーク: 他のイベントにもケータリングされていますか。地域イベントの運営に携わって、どのくらいになりますか。

美由紀: 町のおたんじょう会を始める前は、何から始めればよいのか、どのような準備が必要なのか全く分からず、杉並区内でこども食堂を運営されているいくつかの団体を訪ね、お話を伺いました。皆さんそれぞれ工夫しながら活動を続けておられ、とても多くのことを学ばせていただきました。



町のおたんじょう会を始めてからは、今度は私たちの活動を見学に来てくださる団体もあり、お互いに学び合える関係が少しずつ生まれています。


現在は、町のおたんじょう会の運営に力を注いでいるため、他のイベントへのケータリングは行っていません。しかし、私は「地域をつなぐ活動」は、一つの団体が大きくするものではなく、それぞれの地域で、それぞれのお店や地域の方たちが育てていくことに意味があると考えています。


町のおたんじょう会は、2023年6月に任意団体を立ち上げ、同じ月に第1回目を開催しました



ユニーク: こども食堂などの地域イベントを通じて、達成したい目標などはありますか。また、地域社会に携わることは、どれほど重要だとお考えですか。

美由紀: 私たちが地域イベントを通して目指しているのは、「地域の中で人と人がつながり、お互いを気にかけ合える社会」をつくることです。

 

以前の日本には、魚屋さんや八百屋さん、パン屋さんやお肉屋さんなど、町にはたくさんの個人店がありました。「今日は新鮮な魚が入ったよ」「最近見かけなかったけど元気?」そんな何気ない会話が毎日の暮らしの中にあり、お店は買い物をする場所であると同時に、人と人をつなぐ場所でもありました。




しかし、大型スーパーやコンビニエンスストアが増え、キャッシュレス決済も普及したことで、便利さは増した一方、人と会話をしなくても生活できるようになりました。子どもたちも、大人から「ありがとう」「大きくなったね」「頑張っているね」と声をかけてもらう機会が少なくなり、地域とのつながりは以前よりも希薄になっています。その結果、孤立している人や、困っている子どもや家庭の変化に気づきにくい社会になっていると感じています。

 

だからこそ、私たちのような地域に根ざした個人店には、人と人を結び直す役割があると考えています。そして、その積み重ねは、結果として地域から信頼され、店を支えてくださるお客様とのつながりにもなると思っています。

 

当初は、こども食堂のような活動を考えていました。しかし、寿司や専門店の料理は、毎日の食事として提供するには向いていません。そんな時、息子の友達が「お寿司はお誕生日に食べるものだよ」と話してくれました。その言葉を聞いた瞬間、「それなら町のみんなで子どもたちの誕生日をお祝いしよう」と思いついたのです。




おたんじょう会では、パティシエのケーキ、寿司職人のお寿司、ローストビーフやサンドイッチなど、それぞれのお店が心を込めた料理がならびます。地域のプロフェッショナルが「おめでとう」という気持ちを形にして届けることで、その日が子どもたちにとって特別な思い出になればと願っています。

 

私が一番伝えたいのは、子どもたちに「地域には自分の成長を喜び、大切に思ってくれる人がいる」と感じてもらうことです。そして、いつか人生でつまずいた時に、「帰れる町」「思い出してもらえる町」として心の支えになってほしいと思っています。さらに、その子どもたちが大人になった時、今度は誰かを支える側になり、思いやりが地域の中で循環していく。そんな地域を育てることが、私たちの目標です。


ユニーク: お店は、開業してからどれくらいになりますか。また、家族経営ですか。他にも店舗をお持ちであるか、あるいは、地域密着型ですか。

美由紀: 今の地で58年になります。先代の主人の父から受け継いだ家族経営の店です。店舗は一店舗のみになります。


ユニーク: どのような料理を得意としていますか。

美由紀: 私たちは、伝統的な江戸前寿司を大切にしています。


特にご好評いただいているのは穴子です。開業以来58年間、大切に受け継ぎながら継ぎ足してきた自家製のたれを塗ってお召し上がりいただいています。長い年月をかけて育まれた、深いうま味が特徴です。


また、店内で焼き上げる玉子焼きや、酢で締めた魚、かんぴょう巻なども、多くのお客様に親しまれています。こうした料理は、一見するとシンプルですが、お店ごとに味や仕込みの方法が異なり、職人の技術や個性が表れる一品です。


私たちは、昔から受け継がれてきた江戸前寿司の技術を大切にしながら、一つひとつ心を込めてお客様にお届けしています。


ユニーク: Sushidoro Shorakuは、どこに位置していますか。人々は、どのようにお店を見つけるのでしょうか。


美由紀: Sushidokoro Shouraku(寿し処 松楽)は杉並区下高井戸3-15-13にあります。


たまに海外からのお客様も来てくださいますが、Googleで探した、とうかがっております。


ユニーク: 地元の方や観光客が、なぜ、あなたのお店に立ち寄るべきでしょうか。また、彼らには、どのような体験をしてほしいと考えていますか。

美由紀: 私たちのお店は、観光地や繁華街にあるお店ではありません。静かな住宅街の中に、ぽつんと建つ小さな寿司店です。


以前は周囲にもたくさんの個人商店が並び、活気のある商店街でした。しかし、時代の変化とともに多くのお店が閉店し、今では昔ながらの町の寿司店も少なくなってきました。


店内も決して広くはなく、満席でお断りしてしまうこともあります。それでも、お越しくださったお客様には、「来てよかった」と思っていただけるよう、一人ひとりのお客様との時間を大切にしています。




地元の方には、ほっと安心して帰ってこられる場所として。初めて日本を訪れる方には、観光地では味わえない、地域の日常や日本の町の温かさを感じていただける場所になれたらうれしいです。


そして、お寿司だけでなく、この町で暮らす人たちとのつながりや、地域を大切にする私たちの思いも、一緒に感じていただけたらと思っています。



ユニーク: 他の地域で行われるイベントで、ボランティアをすることに関心は、おありでしょうか。今、何か取り組みたいことは、ありますか。

美由紀: 地域活動にはとても関心があります。しかし、寿司店を営んでいるため営業時間との兼ね合いもあり、他の地域へ出向いて継続的に活動することは、なかなか難しいのが現状です。


その代わりに、私たちは自分たちが暮らし、店を営むこの地域で、できることを一つずつ積み重ねていきたいと考えています。

今、実現したいと考えていることの一つが、「寺子屋」のような学びの場をつくることです。


学校では、決められた教科を学ぶ時間はあっても、「なぜ魚はおいしいのか」「どうして電気が届くのか」「着物や音楽にはどんな歴史があるのか」といった、暮らしや仕事の中にある面白い話を聞く機会はあまりありません。

 



地域には、長年仕事を続けてきた職人や専門家、さまざまな経験を持つ人がたくさんいます。そうした人たちが先生となり、自分の好きなことや得意なことを子どもたちに伝える場をつくれたらと思っています。


ユニーク:  地域イベントの企画・運営において、何か課題に直面することは、ありますか。もしそうであれば、どのようにしてそれを乗り越えていますか。

美由紀: 活動を続ける中で感じた課題は、「イベントを開催すること」ではなく、「その時間が人と人とのつながりにつながるか」ということでした。

 

印象に残っている出来事があります。ある子どもが料理を見て、「わあ、これが全部タダなんて!」と言ったのです。その言葉は、その子の素直な驚きだったと思います。しかし、私たちはその時、「本当に届けたいものは何だろう」と改めて考えました。

 

私たちが届けたいのは、無料で食べられる料理ではありません。その料理をつくるために、朝早くから仕込みをし、それぞれのお店の職人やスタッフが「子どもたちをお祝いしたい」という思いを込めて準備している、その気持ちです。




普段、お店で料理を見ても、その背景を知る機会はほとんどありません。そこで私たちは、料理を作る現場や準備の様子を撮影し、その映像をイベント会場で上映する予定です。料理だけでなく、その一皿に込められた思いも一緒に届けたいと考えています。

 

もう一つの課題は、参加者同士が自然に交流できるようにすることでした。イベントを開くだけでは、初めて会った人同士が会話を始めるのは簡単ではありません。




そこで考えたのが、「名前でビンゴ」というゲームです。参加者同士がお互いに名前を聞いてビンゴカードを完成させるゲームで、大人も子どもも、地域のボランティアも留学生も一緒に参加します。留学生には母国語で話しかけてもらったり、手話ができる方には手話で自己紹介をしてもらったりと、それぞれの個性を生かして交流していただいています。

 

今の子どもたちは、知らない大人と安心して話す機会が以前より少なくなっています。しかし、ゲームという楽しいきっかけがあることで、最初は緊張していた子どもたちも、自然と笑顔になり、自分からスタッフや他の参加者に話しかける姿が見られるようになりました。

 

私は、地域づくりとは大きなことをするのではなく、こうした小さな会話や出会いを少しずつ積み重ねていくことだと思っています。これからも参加者の声を大切にしながら、誰もが自然につながれる場を育てていきたいです。



ユニーク: 地域の方が、こども食堂に参加できる場合、どのような方法が最適だとお考えですか。

美由紀: 私は、地域づくりは特別な人だけが行うものではないと思っています。


町のおたんじょう会では、料理人は料理をつくり、演奏家は音楽を届け、日本舞踊の先生は踊りを披露し、ヘアメイクの仕事をしている方は子どもたちの髪を整えてくださいました。


留学生は子どもたちと遊び、受付や会場づくりを手伝ってくれる方もいます。



つまり、「できることを持ち寄ること」が参加だと考えています。


それは特別な技術でなくても構いません。子どもに話しかけること、一緒に遊ぶこと、会場の準備や片付けを手伝うことでも十分です。


地域には、一人ひとりが誰かの役に立てる力があります。その力が集まることで、子どもたちは「地域には自分を応援してくれる人がいる」と感じられるのだと思います。



ユニーク: 地元の方や観光客が、あなたのお店やイベントに何かしらの形で、貢献するには、どのような方法がありますか。

美由紀: もちろん、お店に足を運んでいただけることは、とてもうれしいことです。


しかし、それ以上にうれしいのは、この活動に共感してくださる方が、それぞれの地域でも人とのつながりを大切にしてくださることです。


例えば、地域のお店を利用すること、近所の人に声をかけること、子どもたちを見守ること、自分にできる形で地域活動に参加すること。その一つひとつが地域を支える力になります。


私たちのおたんじょう会も、多くの人の「少しだけ力を貸そう」という気持ちによって続いています。


もしこの活動を知って、自分たちの町のこと、近所に住む人たちのことを少しでも考えるきっかけになったら、それが私たちにとって一番大きな応援です



ユニーク: 私たちが、ご連絡を差し上げる以前に、ギビングチューズデーについてご存じでしたか。あるいは、それらの活動に参加されたことは、ございましたか。今後、ギビングチューズデーと連携して、取り組んでみたいことなどは、ありますか。私たち(ギビングチューズデージャパン)は、Sushidoro Shorakuやこども食堂のイベントをどのように支援していけば、良いでしょうか。


美由紀: Giving Tuesdayについては、今回お声がけいただくまで詳しく知りませんでした。


しかし、その理念を知り、「誰もが自分にできる形で誰かのために行動する」という考え方は、私たちが目指している地域づくりととても近いと感じました。


今後は、地域のお店、住民、学生、留学生、企業など、さまざまな立場の人が一緒に地域活動に参加できる機会を広げていきたいと思っています。


特に、留学生の皆さんが地域に入り、子どもたちや高齢者と交流することは、お互いの文化を知り、地域に新しいつながりを生み出す大きな力になると感じています。




もしGiving Tuesday Japanにお願いできることがあるとすれば、こうした活動を多くの人に知っていただき、地域で活動したい人や応援したい人と私たちのような地域の取り組みをつないでいただけたら、とても心強いです。


また、私たちの活動が一つの事例となり、日本各地で「地域のみんなで子どもを祝う文化」が広がっていけば、こんなにうれしいことはありません。




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